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2006年02月09日

「ゆとり」 から 「言葉の力」へ。(ちょっと長くなりますが・・・)

 新年一月各地で行われた新年会。 会場で同席した中山よしかつ前代議士が挨拶でマイクを持つたびに引用・絶賛する一冊の本。それが「国家の品格」(新潮新書・ 藤原正彦著)。(写真)

 ベストセラーにもなっているということで、私もどんなものかと読んでみました。

 感想を率直に述べるならば「深く共感、賛同の意」の一言に尽きました。

以来、著者の藤原正彦氏に魅せられ・・・昨日は、たまたま書店で目にした同氏の作品第2弾「祖国とは国語」(写真)を早速買って、 2日間で一気に読み終えました。

 著者藤原正彦氏は国際的な数学者でありエッセイスト、作家新田次郎氏のご子息でもあります。学問・ 科学そして日本の伝統と文化をこよなく愛する気持ちから、自らがつづる言葉に「この日本をなんとかよくしていこう」 という強い志があふれでています。

 ベストセラーとなった「国家の品格」では日本の再生を図るには、自国の伝統や文化また美意識(美しい情緒と記されています) を再認識するとともに、「武士道」という日本古来の行動基準を再興することが不可欠と語られています。そしてそのために「国語を大事にする」 ということを教育の中軸にすべきと強く主張。

 作品第2弾「祖国と国語」の中でもその思いはぶれることなく こう論じられています。
○国家の浮沈は小学校における国語教育にかかっている。
○国語の語彙は思考であり情緒なのである。
○論理を育てるには数学より道筋を立てて表現する技術の習得が大切。これは国語教育や読書を通じて学ぶのがよい。
○脳の9割を利害得失(損得)で占めるのはやむを得ないとして、残りの1割の内容で人間としてのスケールが決まる。 ここを美しい情緒でうめるのである。

 これが実に数学家にして異国での生活が長かった人の言葉かと思うと逆に説得力を感じます。

 偶然にして今朝の新聞では文部科学省が「学習指導要領を今後全面改定する」との記事が各紙一面で報じられました。
これまでの「ゆとり教育」を大きく転換し「言葉の力」を柱とした学力・教養向上のための新たな日本の教育の指針が示されたとのこと。 詳細には「言葉は確かな学力を形成するための基盤、と同時に言葉は他者を理解し、自分を表現し、 社会と対話するための手段であり知的活動や感性・情緒の基礎ともなる」こう説明されています。

 まさに藤原氏の主張そのものです。

 話は遡りますが、私が読書に慣れ親しむようになったのは中学から高校生にかけての頃。 特に高校時代は藤原氏の父新田次郎の山岳小説にハマッていました。
その代表作ともいえる「孤高の人」をリュックに詰めて新宿から夜行列車に乗ってスキー合宿へ。
夜明け間近かには目的地である白馬駅へ到着するのですが周囲は真っ暗。
 暗黙なかの銀世界そして沈黙と静寂の空間・・・降り落ちるかすかな雪の音のなかでスキーを担いで歩き踏みしめる自分の一歩一歩の足音を 「孤高の人」の主人公と重ね合わせる自分がいました。

 そんな思い出を今も忘れずにいられるのは・・・これもまた藤原氏の言うところの「美しき情緒の形成」なのかも知れません。

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